私がサポーターになった理由

VOICE

「正論」で組織は動かない。家業を継いだ税理士が、アトツギ支援を通じて見つけた「力を抜く」ことの真価。


Profile

マッティ

さん

税理士公認会計士

岡山の老舗税理士事務所を三代目として引き継いだマッティ。かつて「理想の組織像」を追い求め、現場との軋轢に苦しんだ彼を救ったのは、アトツギたちのリアルな葛藤と、長期的視点で価値を紡ぐ「ロングターミズム」の考え方でした。公認会計士としての論理的思考と、家業当事者としての泥臭い経験。その両方を併せ持つ彼が、認定サポーターとして「儲かりにくい、けれど意義深い」親族承継の支援に心血を注ぐ理由に迫ります。




「自然科学」から「社会」へ。家族の死をきっかけに選んだ会計士の道

――まずは、これまでのキャリアと、現在のお仕事について教えてください。

岡山県で、祖父が昭和35年に創業した税理士事務所の三代目代表を務めています。現在は社員10名ほどの組織ですが、私が代表を引き継いだのは2年前のことです。

私の歩みは少し変わっていて、大学は理系(農学部)として入学しました。しかし、大学2年生の時に祖父が亡くなり、「家業」という存在を初めて意識するようになったんです。

当時、自分が学んでいた自然科学と、実際に世の中を動かしている社会の仕組みとの結びつきが分からず悩んでいましたが、会計士という仕事はその両者を繋ぐ存在だと気づき、3年次から法学部に編入して公認会計士の道を目指しました。

2012年に試験に合格し、関東の監査法人・税理士法人で上場会社や金融機関の監査等に約8年間携わりました。

その後、岡山に戻り税務の研鑽を積んで今に至ります。

――ご自身も「アトツギ」として苦労された経験があるとお聞きしました。

はい。代表に就任した当初、私は「あるべき組織運営」という理想を現場に押し付けすぎてしまいました。

監査法人時代に学んだ論理的な正解を当てはめようとして、現場のスタッフから強い反発を受けたんです。「なぜ分かってくれないんだ」と苦しんでいた時、多くの先輩経営者から「自分も同じ苦しみを通ってきた」という話を聞き、ハッとしました。

正論で人を当てはめるのではなく、今目の前にいる人たちの「良さ」や「強み」を活かす。

そう考え方を変えた瞬間、自分自身の気持ちがふっと楽になり、いい意味で力が抜けたんです。この経験が、今のアトツギ支援に対する私のスタンスの根底にあります。

初代社長の創業時の写真。黒電話一つで始まった

コテンラジオが繋いだ「アトツギ支援」との出会い

――「アトツギ支援認定サポーター」を知ったきっかけは何だったのでしょうか。

2024年の秋、大阪で開催されたアトツギベンチャーサミット(AVS)でたまたまチラシを見つけたのがきっかけです。登壇者に「コテンラジオ」の深井龍之介さんがいらっしゃったのですが、私は初期からのリスナーで、組織運営で苦しい時期にずっと彼らの放送を聞いて救われていたんです。深井さんが関わっている文脈なら間違いない、と直感的に感じました。

――受講の決め手となった動機を教えてください。

岡山に戻り家業を継いだことは正解だったのか。そんな迷いがゼロではありませんでした。

しかし、能作さんや長坂さんのような、家業を面白く変革している方々の姿を見て、アトツギという生き方の可能性を感じたんです。一方で、地方では優秀な人材が県外に出たまま戻ってこない現状がある。

支援者として、アトツギが戻ってきたくなるような土壌を作りたいと思ったのが動機です。

「共通言語」で語り合う、多様なサポーターたちとの出会い

――実際に講座を受けてみて、どのような発見がありましたか?

とにかくサポーター仲間が個性的で多様であることに驚きました。

税理士同士の集まりは普段からありますが、コミュニティマネージャーや行政、異業種の立場からアトツギに関わっている方々と出会える場は他にありません。

特に「ロングターミズム(長期的視点)」や「アントレプレナーシップ」を体系的に学べたことは大きな価値でした。岡山のスタートアップ支援拠点での活動もできたらいいなと思い、関わり方を検討しているところです。そこで出会うアトツギの皆さんと、こうした共通言語を持って壁打ちできる関係をつくっていけたらなと考えています。

――講座を経て、ご自身の事務所でのアクションに変化はありましたか?

「何かが劇的に変わる」というよりは、時間をかけて知見を熟成させていく感覚に近いですね。具体的なアクションとしては、事務所が法人化して50年という節目を迎えるにあたり、自社の「社史」を作ろうと動き出しました。

30年以上のベテラン社員にヒアリングを重ね、自分たちが受け継いできた「意味」を再定義している最中です。

これこそが、講座で学んだ支援の本質を自ら体現するプロセスだと思っています。

「儲かりにくい」からこそ、僕らが旗を振る意義がある

――今後、この資格やコミュニティをどのように活かしていきたいですか。

中四国エリアでのアトツギ支援をさらに活発化させていきたいです。

この領域は、M&Aのような華やかなスキームに比べると、親族承継特有の感情が絡み、正直なところ短期的には報酬に繋がりにくい側面もあります。

でも、だからこそ「あえてそこをやる」という、ちょっと変わった(笑)、でも熱い志を持った人たちに入ってきてほしい。

ライバルとして競うのではなく、長く続いていく価値をシェアし、みんなで支援の場を盛り上げていく。そんな文化を岡山から発信していきたいです。

――最後に、受講を検討している方へメッセージをお願いします。

事業承継の現場で、既存のやり方に違和感を感じている人にこそ、ぜひ参加してほしいです。

先代経営者の方や、士業の方。目の前のアトツギが抱える「孤独」や「ジレンマ」に寄り添いたいという想いがあるなら、認定サポーターという肩書きは強力な武器になります。

地方にはまだまだ面白い家業がたくさんあります。私たちが旗を振り、その魅力を発信し続けることで、地域はもっと面白くなるはずです。

皆さんと一緒に、アトツギ支援の新しいスタンダードを作っていけるのを楽しみにしています。