Profile
ミズリー
さん
中小企業診断士
佐賀県鳥栖市を拠点に、中小企業診断士として経営コンサルティングやDX支援を手がけるミズリー。
法学部出身で、大手アパレルブランドのバックオフィスや広告代理店で法務を経験。その後、部署異動で新規事業開発や官公庁向けの広報支援業務など多様なキャリアを経験。
2021年にUターンで佐賀に戻り独立した後に中小企業診断士の資格を取得。地元・佐賀の価値ある企業が存続・成長できるよう、アトツギの孤独な心境に寄り添い、サポートすることに情熱を燃やす。

「法務」から「営業」、そして「コンサルタント」へ。異色のキャリアを歩んだ理由
——現在の仕事と、そこに至るまでのキャリアを教えていただけますか?
現在は中小企業診断士として、主に地元のエンジニアやWebディレクター等と共にコンサルティングやシステム開発といったDX支援を行っています。私一人でコンサルティングをするのではなく、佐賀や九州にいるフリーのコンサルタントやディレクター、士業の先生方といった専門家ネットワークを通じて、お客様に最適なサポートを提供しています。
ただ、ここに至るまでのキャリアは少しユニークかもしれません。大学は法学部で、弁護士を目指していましたが、司法試験に落ちてしまって。法務のキャリアを求めて就職活動をしていたところ、縁あってアパレル大手のユナイテッドアローズの法務部に入社しました。
約3年間、法務の仕事に携わった後、法務のスキルや全社プロジェクトに参加していた行動力を評価いただいて、電通に転職。事業部門内の管理やリスクマネジメント業務に従事していました。
しかし、現場で働くうちにマーケティングや営業の仕事に興味が湧いてきました。部署異動の希望を出して、念願かなって営業として働き始めると、これが本当に面白くて。主に官公庁の案件を担当する中で、もっと知識の幅を広げたいと強く思うようになりました。
約4年間、営業として駆け回る中で「いつか地元に帰って、自分の会社を立ち上げたい」という気持ちが芽生え、3年前にUターンで佐賀に戻り独立。法務と営業という一見かけ離れたスキルを持っていたこともあり、ゼネラリストとして活躍できるよう知識を広げるため、中小企業診断士の資格を取りました。
アトツギ支援との出会い──「守り」から「挑戦」へ変わる瞬間を見た
——アトツギ支援に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
独立後、大分県庁の「アトツギ支援プログラムGUSH!」に、メンターのような立場のバディ(伴走者)として、アト ツギたちの伴走をさせてもらう機会がありました。
私自身は初代経営者で、家業を継いだわけではありません。ですが、そのバディとして関わった「アトツギ」たちの変貌ぶりに、本当に心を揺さぶられました。
担当させていただいたアトツギたちは、立派な家業を背負うプレッシャーと闘っていたり、まだ家業の中に自分が戻れる椅子がなかったり、社内で積極的に力を貸してくれるメンバーがいなかったりと、それぞれ異なる葛藤や悩みを抱えていました。
それが、GUSH!のプログラムやアトツギ甲子園に挑戦し、さまざまなアトツギ経営者の先輩に出会い、内省と行動を繰り返していく中で、目に見えて成長し、壁を乗り越えようと挑戦していく姿にとても感動しました。その中には、全国大会の決勝まで進み、決勝の舞台で堂々と大きな夢を語るアトツギもいました。
また、目先の結果ではなく、アトツギの将来を当事者以上に真摯に考え、向き合い続ける支援チームの姿にも感銘を受け、今の自分の支援スタイルに大きな影響を受けています。バディとして、私ができたことは本当に少ないかもしれませんが、方向性を提示するのではなく、彼らが自分で考え、自ら成長していくのを邪魔しない。横、いや、少し後ろからついていくようなイメージで伴走しました。
アトツギとしての日々の苦悩を分かち合い、彼らの持つエネルギーを発散させる場所、心の拠り所になる場所が、アトツギのコミュニティやアトツギ甲子園には あるんだと感じました。
この経験で、私はすっかりアトツギ支援の「沼」にハマってしまったんです。
ビジネスのセオリーだけでは語れない。認定サポーターとして得られたもの
——「認定サポーター講座」を受講して、どんな発見や学びがありましたか?
一番の収穫は、「横のつながり」です。地方にいると、ビジネスの話はどうしても経済合理性で語られがちです。でも、地域の中小企業支援はそれだけでは解決できない、もっと人間的で感情的な部分に寄り添うことが重要だと感じています。
この講座には、そうした「非合理」な部分にも真摯に向き合いたい、と考える熱い支援者たちが集まっているんです。普段の仕事ではなかなか出会えないような、価値観が近いメンバーと出会い、「一人じゃない」と思える仲間ができたことは、地方で活動する私にとって、大きな財産になりました。
また、私自身がファミリービジネスについて素人だったので、講座で体系的に学べたことも非常に役立ちました。特に2日目のファミリービジネスについての講義は、本当に目から鱗でしたね。普通の経営理論だけでは語れない、家族関係の複雑さや、そこからくる悩みを理解する上で、非常に勉強になりました。これは、アトツギだけでなく、中小企業の経営者の悩みを理解するうえで不可欠な視点だと思います。
講座で得た知識は、本業にも活かされています。普段、中小企業の経営者の方々と会うことが多いのですが、アトツギという存在を頭に置くことで、短期的な課題解決だけでなく、10年、20年という長期的なスパンで会社を見れるようになりました。
単なる短期的課題解決ではなく、長期的に寄り添う伴走者になれる。これが最大の変化です。これは、金融機関や士業など、クライアントと長く付き合える立場の方々にとって、非常に重要な視点だと思います。

佐賀でアトツギ支援の輪を広げる。人生を賭して向き合う理由
——今後、どんな形でアトツギ支援に取り組んでいきたいですか?
今後、佐賀県内でアトツギ支援の輪を広げていきたいと思っています。実は佐賀は、まだ「アトツギ」という概念自体が浸透しておらず、孤軍奮闘している後継者が多いのが現状です。
アトツギ支援認定サポーター講座を受講した後、九州経済産業局が主導するプログラム「アトツギLINK」の佐賀イベントを、ベンチャー型事業承継と私の会社で運営することになりました。これも、アトツギ支援認定サポーターになったからこそ掴めたチャンスです。
昨年、私がアトツギ甲子園で味わった感動を、今度は佐賀の地に広げていきたいと強く思っています。
また、アトツギ甲子園への参加を希望する後継者がいれば、私で良ければいつでも壁打ちに応じたいですし、なんでも気軽に相談して欲しいです。
私は「跡継ぎ」でも何でもないのですが、自分で会社を立ち上げた経験やアトツギ支援の経験を活かして、アトツギの皆さんの背中を押せる存在になりたいと思っています。

新しい視点がビジネスの可能性を拓く
——アトツギ支援に興味を持つ方々へ、メッセージをお願いします。
地域の中小企業の経営支援は、単に経営者に専門的な知見を提供をするだけではありません。その先の10年、20年を見据えて本気で向き合うことではじめて、信頼され、一緒にいい仕事ができると思っています。
特に、同世代のアトツギと出会い、彼らが持つ熱い思いに触れると、自分自身の 仕事の幅もぐっと広がりますし、損得を超えた人間的な成長が見込める30代の今だからこそ、同世代のアトツギと一緒に成長していきたいという気持ちがあります。アトツギの成長に伴走する経験は、想像以上に面白く、そして深く心を動かされるものです。
「アトツギ支援認定サポーター」という資格は、中長期的にクライアントと深く関わる仕事をしている方々にとって、非常に価値があると思います。中小企業診断士など士業の方、商工会議所の職員、銀行の営業担当者など、一つの会社と長く付き合える立場の方にこそ、ぜひ取得してほしいです。アトツギという新しい視点を持つことで、経営者の方々ともより深い信頼関係を築けるはずです。
単なる知識の習得だけではなく、同じ志を持つ仲間と出会い、アトツギという次世代の担い手たちと一緒に、日本の未来をつくっていく。そんなやりがいのある活動に、ぜひ一歩踏み出してほしいと思います。





