私がサポーターになった理由

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「事業承継支援は未来をつくる仕事」──先代との衝突経験を持つ不動産鑑定士の伴走哲学


Profile

ノビー

さん

不動産鑑定士

家業(看板屋)を継ぐ前提でキャリアを築くが、親と経営方針の違いから衝突し、自ら会社を立ち上げる。自身の経験から、アトツギ特有の複雑な悩みを解決する「受け皿」の必要性を痛感し、認定サポーターに。不動産鑑定士としての知見を活かしつつ、地域を巻き込み未来をつくることに価値を置き、特に秋田・東北エリアの挑戦するアトツギをサポートする。専門家として震災後の東北地方での事業再生案件に関わった経験も持つ。

現在の仕事と不動産鑑定士としての役割

──今の仕事と、その活動内容を教えてください。

現在、不動産鑑定士としてお仕事をさせて頂いています。

主な業務内容は、不動産の評価や調査、不動産コンサルティングです。地価公示や地価調査といった国や県からの依頼の他、民間の分野でもM&Aや相続、事業承継の場面で不動産が論点になった際のデューデリジェンス(適正評価)などに関わっています。

家業を継ぐ前提でのキャリア構築

──不動産鑑定士になったきっかけや、これまでのキャリアについて教えてください。

元々、秋田県で看板屋を営む家業がありました。父との約束で「自分で事業を持てる人になる」ことを前提に、家業に戻るためのキャリアを積む必要がありました。

20代半ばで最初の会社を辞め、その後に入ったベンチャー企業で大きく挫折しました。その状況を見かねた父が紹介してくれたのが、秋田県の不動産鑑定士の先生でした。

その先生から、不動産鑑定士の仕事は、現地に行く「フィールドワーク」と評価書を書く「デスクワーク」のバランスが面白いというお話を伺い興味を持ちました。

不動産鑑定会社に勤務しながら試験勉強に励んでいた当時、私が所属していた事務所では、東日本大震災の被害が色濃く残る地域を中心に、数多くの事業再生案件に携わっていました。

震災の傷跡が残る中で、事業の再スタートに挑む方々や、その支援に全力を尽くす先輩方の姿に、私自身も大きな感銘を受けました。試験合格後も不動産鑑定士として東北地方を中心に多くの経験を積ませて頂きました。

先代との衝突を乗り越えた経験

──家業に戻る前提があったとのことですが、先代との衝突や、独立された経緯をお聞かせください。

父との対立は、まさに私にとってアトツギ問題の核心でした。

父は「私が家業に入れば現実を理解できるはずだ」と考えていた一方で、私は「家業にはまだまだ大きな可能性がある」と信じていました。

お互いに事業への思いや将来の展望が大きく異なり、その温度差から激しくぶつかり合い、結局2年ほど親子の関係が疎遠になってしまいました。

最終的に親子として歩み寄ることができましたが、家業において必ずしも親子が同じ方向を目指せるわけではないという現実を痛感した経験でした。

これらの経験を通じて、まずは「自分がコントロールできる範囲に全力を注ぐ」ことの重要性を強く実感しています。

たとえ親子であっても、それぞれが異なる価値観や考え方を持つ大人です。親だからといって「相手に理解してもらうこと」を前提にしすぎないことが大切だと感じました。

こうした思いを踏まえ、今は自分自身が経営する会社の成長に全力で取り組むことに集中しています。

「受け皿がない」アトツギ特有の悩み

──アトツギ支援認定サポーターに関心を持ったきっかけは何でしょうか?

私自身の経験を通して、アトツギ特有の「誰にも話しづらい悩み」があることを痛感しました。

家業や親との確執は、地域が狭いローカルのアトツギにとっては、下手に話すとすぐに「悪い噂」になって広がってしまいがちです。

私自身、コーチングを受けて心が救われた経験がありましたが、アトツギがそういった悩みを話せる「受け皿」は、世の中にはありそうでありません。そんな時に、私が個人的に経験した「親子間の問題」と「事業の課題」を切り分けずに向き合えるアトツギ支援の存在を知りました。

さらに、私自身の問題意識と、会社として事業承継分野により一層取り組んでいきたいという組織としての方向性が一致したことから、認定サポーターとして活動することを決意しました。

専門分野を超えた仲間との横の繋がり

──認定講座を受講し、印象に残ったことや得られた価値は何でしょうか?

一番印象的だったのは、アトツギ支援に興味を持つ多様な専門家や経営者が集まっていたことです。

弁護士、税理士、中小企業診断士、金融機関、そして家業を継承した先代までもが、皆がそれぞれの専門分野を超えて「アトツギ」という共通のテーマで繋がっていることに、すごく価値を感じました。

これだけ多角的な視点を持つ人々と交流し、「他の人はどう取り組んでいるか」「どこに課題を感じているか」をシェアできたのは、かけがえのない経験です。

アトツギ支援という枠組みを通じて、多様な専門性を持つサポーター同士が連携できるネットワークができたことは、私自身の今後の活動にも大きな力になると感じています。

地方のフィールドで未来をつくる

──今後の活動への意気込みや、アトツギ支援で目指す展望をお願いします。

事業承継支援といえば、株や不動産について決裁権のある先代にスポットが当たりがちですが、それでは十分ではないと感じています。

バトンを渡す側の先代への支援はもちろん大切ですが、それを受け取る側のアトツギを支援することも、未来をつくることと同義だと思います。

秋田を始めとした東北エリアは少子高齢化や人口減少が進んでいる点が度々指摘され、事業承継においてもネガティブな視点から話題にされがちです。

しかし、私はこの地で熱い思いを持って事業に取り組むアトツギに数多く出会ってきました。

課題が多い地域だからこそ大きな可能性を秘めていると感じていますし、私もこの地にいるからこそのサポートができると思っています。

「事業承継は未来をつくる仕事」です。まだまだ、サポーターとしては具体的な活動に移せていない部分も多いですが、自分自身の経験も糧に、秋田・東北エリアを中心に、挑戦するアトツギを支えるサポートを深めていきたいと考えています。