私がサポーターになった理由

VOICE

行政の枠を超え、熱意で寄り添う。アトツギ支援に求められる「正統性」と「共創」の形


Profile

ロン

さん

群馬県庁

群馬県庁でアトツギ支援に奔走するロン。かつては「行政の窓口」として支援の届け方に悩んでいた彼が、認定サポーター講座での学びを通じて辿り着いたのは、アトツギが家業で信頼を築くための「正統性の獲得」という本質でした。単なる制度の案内人から、熱意を持って一歩踏み込む伴走者へ。地域での「共創」を加速させる、彼の変化と決意に迫ります。

行政職員として「地域」に根ざし、アトツギの複雑な課題に向き合う

――まずは、これまでのキャリアと現在のお仕事についてお聞かせください。

現在は群馬県庁の地域企業支援課に所属し、産業経済政策の推進や県内企業の支援に携わっています。主な担当業務は事業承継支援、そしてその重要な一環としてのアトツギ支援です。

私のキャリアのスタートは新潟県庁でした。当時から「国という大きな枠組みよりも、もっと地域に根ざした場所で仕事がしたい」という強い思いがありました。市町村よりも広域的な視点で仕組みづくりに関わりたいと考え、都道府県庁という場を選んだんです。

これまで政策企画や福祉、知事会議の運営など多角的な部署を経験してきましたが、令和6年4月から現在の部署に配属され、本格的にアトツギ支援に取り組むことになりました。

――「アトツギ支援認定サポーター」の存在を、どのようなきっかけで知りましたか?

一昨年、東京で開催された「アトツギサマーキャンプ」に参加したことが大きなきっかけです。そこで運営事務局の皆さんや熱意あるアトツギたちと出会い、活動内容に触れる中で、認定サポーターという制度があることを知りました。

――この資格を取得しようと思った「決め手」は何だったのでしょうか?

アトツギが抱える課題を深く知るほど、その複雑さに驚かされたからです。

経営課題はもちろんですが、家族経営特有の「親族だからこそ本音が話せない」「社内で孤独を感じている」といった心理的な壁が、企業ごとに全く異なる形で存在しています。

行政職員として関わる中で、2年目からはより「自分のもの」として事業を動かしていきたいという思いがありました。

単なる行政の窓口担当という立場からの関わりだけでは限界がある。一歩踏み込んで、アトツギの皆さんと「これまでとは違う関係性」を築き、一人の支援者として伴走したいと考えたのが受講の決め手です。

「正統性の獲得」がもたらした支援のパラダイムシフト

――実際に講座を受講してみて、最も印象に残っている発見は何ですか?

「正統性の獲得」という概念です。これは私にとって非常に大きなパラダイムシフトでした。

支援側はどうしても「新しい事業をどう作るか」「どうDXを進めるか」といった目に見える成果を急ぎがちですが、アトツギにとってまず必要なのは、家業を深く理解し、先代や社員から信頼を得るという「順序」を守ること。

この「土台を固めるプロセス」を抜きにしては、どんなに素晴らしい事業計画も社内で浮いてしまい、孤立を招いてしまいます。理論としてこの順序を整理して学べたことで、支援の解像度が劇的に上がりました。

――その発見は、実務にどう活かされていますか?

支援の設計そのものが変わりました。現在は「段階に寄り添った設計」を強く意識しています。

例えば、最初から「事業開発」をゴールにするのではなく、その手前にある家業の棚卸しや対話を重視するようになりました。

最近では、あえて特定のテーマを決めずに「まずは集まってみよう」と呼びかけるなど、アトツギが自発的に繋がれる場づくりを始めています。

行政がガチガチに固めたプログラムを提示するのではなく、彼らの現在のフェーズに合わせて柔軟に変化できる支援の形を模索しています。

「支援者としての目印」と、信頼関係の変化

――資格取得後、アトツギとの関係構築において効果を感じる場面はありますか?

この資格を持っていることは、アトツギの皆さんにとって「この人はアトツギ特有の心理的なハードルや寄り添い方を分かってくれている」という安心感、つまり「目印」になっていると感じます。

私自身のスタンスも大きく変わりました。以前は「良さそうな情報があればどんどん提案しよう」と前のめりになっていましたが、今は「ある程度受け身で、徹底して聞く」ことも大切にしています。

アトツギは皆、非常に忙しい。こちらの的外れな提案が相手の貴重な時間を奪ってしまうことを、受講を通して痛感したからです。

まずは相手のフェーズを正確に把握し、求められた瞬間に最適な選択肢を提示する。このスタンスに切り替えてから、アトツギの方々との信頼関係がより強固なものになった実感があります。

――コミュニティや講座を通じて、どのような出会いがありましたか?

私は4期生として参加しましたが、事務局や社団法人の方々、そして全国のサポーター同士の横の繋がりができたことは大きな財産です。認定サポーターという共通言語を持つ仲間がいることで、県を跨いでの知見共有もスムーズになりました。

今後は、FBAAの専門的な知見をさらに深掘りする時間や、リアルでの交流、研究知見の継続的な共有などがさらに充実していくと、コミュニティとしての価値はより高まっていくのではないかと期待しています。

地域での「共創」を加速させ、未来のアトツギを支える

――アトツギ支援の活動を通して、どのような瞬間にやりがいを感じますか?

地域の中で、本来なら関わることがなかった人たちが繋がり、そこから自発的な動きが生まれる瞬間に立ち会えることが何よりの喜びです。

例えば、建設業を営むあるアトツギの方が、近隣の別のアトツギ企業と繋がり、現場の機材置き場の貸し借りを自発的に相談し合えるようになった、というエピソードがありました。小さなことかもしれませんが、これはまさに「共創」の第一歩。行政が介在しなくても、アトツギ同士が助け合える文化が地域に根付く。そのきっかけを作れることに、深いやりがいを感じます。

――今後の展望と、受講を検討している方へのメッセージをお願いします。

今後は、承継前の前提となる土台作りにより注力していきたいです。

アトツギが立てた今年の計画を定期的に一緒に振り返り、進捗を管理するような、より密な伴走支援を目指しています。

アトツギ支援は、単なる業務として「義務」でやるものではありません。そこには必ず「属人的な熱意」が必要です。踏み込んだ領域だからこそ、支援者の人間性が問われる仕事だと思っています。

私と同じ行政職員の方には特におすすめしたいです。

アトツギが理論や現状をどう捉えているかを知ることは、支援の質を根本から変えます。また、アトツギ本人が受講しても面白いかもしれませんね。支援現場で何か「熱いもの」を感じ、自分も力になりたいと熱意が芽生えたなら、ぜひこの門を叩いてみてください。

その熱意を具体的な支援の力に変えるヒントが、ここには凝縮されています。