Profile
シェリー
さん
中小企業診断士 / 一級販売士
マーケティング支援や新規事業開発を軸に活動する二児の母。第一子を妊娠中、家業の事業承継問題を契機に診断士に。現在は仕事と家庭の両立に試行錯誤しつつ、中小企業のサポートを行っている。熊本県出身、家業は酒屋。

「人の暮らしを支えたい」生協の現場で見えた“人生の奥行き”
──まずはこれまでのキャリアや、お仕事の内容について教えてください。
私は人の暮らしに興味があって。就職活動でも事務所でじっと座っているより、体を動かして汗をかき、クタクタになって眠るような人間らしい仕事に価値を感じていました。学生時代はボランティア部に所属し、漠然と社会の役に立つ仕事がしたいという思いもあり、地域の暮らしに貢献できる生活協同組合を選びました。旅行好きなので、閑散期に休暇を取りやすいというのも密かなポイントでした(笑)。
ところが、理想を胸に抱いて入所した新人研修初日、待っていたのは「飛び込み営業」。当時の私は「入る場所を間違えたかも……」と愕然としました(笑)。しかし、その経験が「どんな理念があっても、事業を行う上では売上と利益が不可欠である」という商売の原理原則を、身をもって知る最初の機会となりました。
入所後2年間はトラックを運転し、週に約400軒の家庭を回って商品を届ける営業に従事しました。家庭の玄関先での会話から垣間見える「暮らしのリアル」に触れるのはすごく刺激的で、多様な人生の断片に触れることが本当に楽しく、大切な思い出です。キャリアの1つ目の転換点は、3年目にシンガポールの関連生協への出向に手を挙げたことです。日本では店長登用は30~40代が多いですが、現地では同世代の職員が、新卒入社後2~3年でベテランスタッフを率いて店を切り盛りしていて、「自分はまだ若手だから」という意識が吹き飛びました。異国の地でレジ打ちから経営会議まで、現場と経営の両面にどっぷり浸かる濃い時間を過ごしました。
帰国後はバイヤーとして、仕入や価格交渉、現場向けの研修会など、MD全般を経験しました。仕事も面白かったのですが、その矢先、実家の事業承継問題が持ち上がりました。
「家業を継ぐなら診断士を」──家族の葛藤と、独立への道
──家業の承継が、資格取得のきっかけだったのですね。
そうです。てっきり父の跡を継ぐと思っていた弟が両親と喧嘩をして出て行ってしまったのが契機です。私は大学進学で地元を離れ、結婚して仕事も楽しく、継ぐことは考えていませんでした。でも、ふと、幼い頃に、今は亡き祖父の家でお酒の一升瓶のフタをコマにして遊んだ記憶や、「誰も継がないのか」と寂しそうにつぶやいていた顔が浮かびました。私の人生の何倍も続いてきた商売を畳むのは純粋にもったいないと感じました。
父から提示された条件は「中小企業診断士の取得」。当時はどんな資格かも知りませんでしたが、それが条件ならと、第一子出産の際、病院のベッドでも勉強して無事取得しました。
──その後、実際に承継へと進まれたのでしょうか。
実家が遠方なので折に触れ帰省し、対話を重ねましたが、折り合いがつきませんでした。資格を取っても当事者として家業の問題に踏み込む難しさを痛感しました。まして弟が既に音信不通になっている状況で、これ以上の家族の分裂は避けたい気持ちが先に立ち、結局、現時点で家業は継いでいません。でも、この当事者としての挫折が、今の私の原動力になっていると感じます。
──今の仕事と、その活動内容を教えてください。
現在は独立し、中小企業のマーケティング支援や新商品開発、販路開拓、事業計画策定、その他に女性経営者の支援を専門にしています。民間企業向けのコンサルティングや研修の他、公的機関での経営相談、大学での非常勤講師なども行っています。中小企業診断士には独占業務がないからこそ、自分のカラーを出しやすいのが魅力ですね。
家業は今も父が社長を務めていますが、私自身の心境は大きく変わりました。独立して仕事をする中で経営の知識を得たことで、父の考えを一人の経営者の判断として捉えられるようになりました。今は、「もし万が一の場合は、診断士として得た知識とネットワークで役に立とう」という気持ちでいます。父が承継の条件として診断士を課したのはこういう意図があったのかもしれませんね。真意は分かりませんが…(笑)

アトツギ支援認定サポーターの先輩との出会いが、サポーターへの扉を開いた
──「アトツギ支援認定サポーター」の存在は、どうやって知ったのですか?
元々はファーストの前身「U34」のメンバーとしてお世話になっていた時期があり、そのご縁でこの講座の立ち上げ時にゴードンからヒアリングを受ける機会がありました。その後、レオさん(認定サポーター1期生)とアトツギ仲間でのBBQでお会いしてお話を聴く機会があり、受講を決めました。
──実際に講座を受講してみて、どのような発見がありましたか?
一番印象に残っているのは、事例の「生々しさ」です。事業承継の制度やテクニックを学べる講座は他にもありますが、一般社団法人ベンチャー型事業承継はアトツギのコミュニティを持っているので、実際の現在進行形の事業承継事例を学べる点は、他にはない価値だと思います。
また、支援者としてのスタンスについても深く考えさせられました。「共感」だけではダメだし、かといって論理だけでもいけない。アトツギのマインドを深く理解した上で、適切な距離感で伴走することの重要性を改めて学びました。
サポーター同士が「声をかけ合える」コミュニティへ
──資格を取得したことで、ご自身の活動にどのような変化がありましたか?
周囲から「アトツギ支援の人」として認知されるようになったことが一番の変化です。これまでは、アトツギ仲間からはアトツギ、中小企業支援のネットワークからは診断士と、個別で認識されていましたが、サポーターを取得したことで自分の背景と専門性がひとつに繋がった感じがしています。
一方で、講座を受けてみて「もっとこうなればいい」と思う点もありました。例えば、課題が事前に思っていたより大変で(笑)時間を確保して取り組みたかった気持ちはあります。第二子の産後直後に受講したので、これは私自身の反省点ですが。
今後は、運営メンバーや受講生同士の関わりがより深まり、修了後もサポーター同士がお互いにメリットをもたらし合えるような仕組みが加速していくと嬉しいです。

「アトツギ娘」が悩んだ時、真っ先に思い出してもらえる存在に
──今後の展望についてお聞かせください。
「アトツギ娘」支援に力を入れていきたいです。私自身、事業承継を志してからキャリアの転機やライフイベントも重なり、日々試行錯誤している状況です。中小企業の支援現場にはまだ男性が多く、女性の中小企業診断士は6%、30代となると1%ですが、同性や同世代の専門家に相談したい場面もあると思います。
実は先日、私自身も予期せぬ困難に見舞われて非常にしんどい時期を過ごしました。心身ともに疲弊している状況で、通常通り仕事もこなし、家庭も回しながら、本当に信頼できる専門家を探すこと、困難と向き合うことの大変さを、身をもって痛感しました。
経営も家族関係も、山あり谷ありです。何も起こらないのが一番ですが、普段から信頼できるコミュニティや人と繋がっておいてほしいと思いますし、アトツギ娘の皆さんが悩んだ時、「まずはシェリーに相談しよう」と、一番に思い出してもらえる存在でありたいと思っています。他のサポーターや支援機関とも積極的に連携し、少しでも荷物が軽くなるようにサポートしたいです。
「専門家に頼みたいけど費用がいくらかかるかわからない」「使える制度がないか知りたい」など小さなことでも、気軽に声をかけて欲しいと思っています。
──最後に、サポーターを目指す方へメッセージをお願いします。
この制度は、単なるスキルの習得を目指す講座ではありません。「本気でアトツギを応援したい」という熱意がある人にこそおすすめです。アトツギに自分が出来ることを還元したいという想いがある方、アトツギへの解像度をもっと高めたい方、ぜひ一緒にこのコミュニティで活動しましょう。





